2010年5月28日金曜日

「短期講座 人物を描く」四日目

今日はキャンバスに描き始めて2日目、皆さん、ある程度人物像が見えてきている状態からのスタートです。
講座は毎週朝9時半から始まるのですが、早い時間の講座にも関わらずきちんと皆さんお揃いで、時間ぴったりにポーズが始められます。
う〜ん、素晴らしい(涙)。
授業中も真剣そのもので、本当に良い緊張感で授業が進んでいきます。

さて、描き出しからもう一歩踏み込んでいく今日、どんどん細部を描き込みたいところ・・・ですが、この段階ではまだあまり形を決めず、人物の良いバランスや形を「常に探り直す事」が重要です。一度決めた形を信用せず、どんどん形を見直していきましょう。一度決めた形を信用しない、これは非常に重要なポイントです!



上の作品は、皆さんおなじみルノアールの初期の人物です。先週の授業で輪郭線を括ってから中を塗るのではなく、直接形に絵具を置いていきましょうというお話をしましたが、この作品はその様な方法で描かれています。輪郭の中を「塗り絵」をするように絵具を置いている部分は全く見当たりません。一筆一筆、形や位置に触れていくような意識で絵具を置いています。(作品を見る時に、何が描かれているかだけではなく、どう描かれているか、という事に着目して絵を見て下さいね!)

さて、4週目にあたる本日は、講座の折り返し地点になりますので、中間講評をさせて頂きました。ずらっと並べてみると色調の違い、タッチの違い、形の捉え方の違いなど、さまざまな作品があり、個々に課題はあるものの全体的にはとてもに良い感じに進行しています。後半どんな作品に仕上がっていくのか非常に楽しみになってきました。

中間講評より。
Kさん作品
Kさんには上のルノアールの作品を参考にして頂き、少し意識的に筆触を残す事や絵具を広い面積に塗らずに少しずつ置いていく事を試して頂きました。まだ形のぎこちなさはありますが、良い感触で絵具が置けるようになってきました。まだまだ時間がありますので、じっくり形を見直していきましょう!




Mさん作品
絵画鑑賞がお好きなMさんは、いろんな作品をご存知です。絵を描く時にも、対象物を写すというだけでなく、色調、線の扱いなど、絵のイメージとしてどう描きたいかという事が具体的にあります。Mさんの良いところは一貫してそういうこだわりからぶれないところにあり、ねらいも面白いです。ただ・・・線の扱いは難しいですね!



Yさん作品
唯一、油彩経験の豊富なYさんは描き出しから途中経過と、空間を探るように大きく絵具が置かれていきます。途中絵具のバタツキが気になる場面もありましたが、持ち前のクロッキー力でポイントの形を決めていくと画面が落ち着いてきました。細部にとらわれず、全体感を意識して進めていくという事に関しても、みなさんにとって非常に参考になる状態です。



6月20日に「裸婦クロッキー」を行います。クロッキー力を付けたいという方、裸婦を描きたいという方是非ご参加下さい。詳細はえ塾HPよりご覧下さい。

2010年5月26日水曜日

宣伝になりますが・・・。



「え塾」の母体である、美大受験予備校「横浜美術学院」にて映像・メディア表現コースで講師をしています、中嶋莞爾先生の監督作品「クローンは故郷をめざす」(2008年)のDVDが発売されます。

作品は2006年に中嶋莞爾先生のオリジナル脚本がサンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞し、中でもヴィム・ベンダース氏からの高い評価を受けて映画化となったものです。作品は2008年に公開され、日本各地で上映され高い評価を得ています。その後も国内外での映画祭への出品が続いています。静かで、とても映像の美しい作品です。この機会に、是非ご鑑賞下さい!

●『クローンは故郷をめざす』PREMIUM EDITION DVD(2枚組)
定価6090円
☆特典映像
DISC1:予告編
DISC2:「メイキング オブ クローンは故郷をめざす」メイキング映像(撮影現場、キャスト・スタッフインタビュー、制作秘話 ほか) 50分

●『クローンは故郷をめざす』通常版 DVD
定価3990円

発売日2010年5月28日
発売元 角川映画

中嶋莞爾監督HPはこちら

2010年5月24日月曜日

「短期講座 人物を描く」3日目


クロッキー・エスキースを経て、いよいよ今週より本番の制作に入ります。

今回は比較的油彩の経験が少ない人も多いため、事前にキャンバスに中間色の「地塗り」を施してから制作に入るという事をご提案させて頂きました。この「地塗り」というのは油彩の表現では比較的オーソドックスな手法で、その後に置く絵具の色調に含みを持たせる効果や、画面全体の色調をつないでいく効果があります。絵具の扱いに慣れない頃は、絵具箱から選んだ色をそのまま置いてしまいがちで、色調が単調になりがちですので、こうした地塗りが後々力を発揮してくる事でしょう。



今回はテールベルトのような深いグリーンやイエローオーカーのような黄色、ローアンバーのような茶系を下地にしています。本当はどのような色を下地にしても良いのですが、今回のような色の選択はこの後人物を表現していくには無難な色の選択でしょう。特にテールベルトのような色調はこの後で肌色を作っていく時に透明感のある肌を作りやすくします。

さて、いよいよ人物を描きます。2週目にエスキースをしていますので、大体の構図は決まっています。その構図に倣って描き出していくのですが、ここで講師Kより「輪郭線を引かずに、中の形に絵具を置いていきましょう」と声がかかります。殆どの方が鉛筆などで輪郭を引いて形を捉えようとするのですが、今回はそれをせずに形に直接絵具を置きましょう、という事なのですが、そう言われると皆さん実はとても不安になり、なかなか手が入っていきません(笑)。この辺りの感覚は難しいので、講師K、講師Aが共に加筆指導していきまます。授業中「難しいけど、面白いわ」という声が聞かれました。そうなんです、絵を描く事は難しい、でも面白い、そんな感覚を味わって頂けたら本望です!簡単に仕上げず、あれこれ悩んだ分だけ良くなりますよ!



Tさんは、対象の固有色にとらわれず色を置いていけます。色彩や絵具の交わりを楽しんでいるようにも見え、絵具が生き生きとしていますね。皆さん、対象を写す事だけにとらわれず、もっと絵具を置く事を楽しみましょう!

最後にロートレックやモディリアニ、ルノアールなど皆さんおなじみの作家の人物表現をもとに、表現のポイント等をお話ししました。

今後どんな作品が出てくるのか楽しみですね!

2010年5月15日土曜日

土曜午後 水彩画コース

土曜日の水彩画コースを久しぶりにお伝えします。
春らしくカラフルなモチーフです。
このところテーブルにいろいろなモチーフを広げてその中から好きなものを選んで
絵にしていくという課題です。


一つを取り上げる人もいれば周辺までいくつかを選ぶ人もあり、自分の描きたいものを描く人もいます。




授業の中では色々な画集を紹介しながらのお話も入れつつ。


これからこの課題も後半に入ります
様々なスタイルの作品が出てくる予感がして楽しみですね。

2010年5月14日金曜日

「短期講座 人物を描く」2日目

「短期講座 人物を描く」2日目<前編>

先週はクロッキーでしたね。なかなか形が捉えられず、皆さん苦労していました。
2日目の今日は、実際に制作する画面に近い大きさでのエスキースです。

まずは、エスキースという言葉の解説をしていきましょう。

「エスキースというのはフランス語で、スケッチや下絵のこと。絵を描く前に、あらかじめ自分の描こうとしている絵のイメージを、本画とは異なる素材も用いながら描きだしたもの。本画よりもやや小さな画面で行うことが多く、漠然としたアイデアから一歩進めた作業と考えてよい。(横浜美術学院サイト:美術用語辞典より)」

ざっくりと言ってしまえば、下描きです。漠然とキャンバスに向かって描き出すと、構図が行き当たりばったりになってしまいがちです。人体をどのような大きさに入れたいのか、全身入れずに描くならどこで切れば良いのかなどの確認をしていきます。もちろん、先日の授業でのポイント「全体のバランスを見ながら描く事」も大切ですね。さらに進んで、背景の扱いや、画面の色調、人物の中でポイントとして見ていきたい事等も意識出来ると良いですね。

1ポーズ目終了した後、講師一人から全体に「まずは席から下がって、この段階でのプロポーションを確認してみましょう。」と声がかかりました。「構図や大きなバランスは初めにしっかり見ておかないと、終盤には修正出来ませんよ〜。」とも。先週同様、ほとんどの方がこの段階で頭部が小さくなっています。「全体のバランスを見ながら描く事」を再確認して頂きます。

その後、2ポーズ、3ポーズとポーズを重ねていきながら、個々にアドバイスや加筆指導が入りました。

今回は人物を描くのは初めて、という方がほとんどですので、エスキースで絵のイメージを具体的にするという事より、人物のプロポーションを見直す事に終始してしまった感じになりましたが、徐々に形を見続け、粘り強く修正し、描き続けていくうちにだんだんいい形になっていきました。
下はTさんのエスキースです。



Tさんのエスキースの講評時より。
Tさん:顔の正中線、どうでしょう。顔は右を向いて、身体は正面で、足は左にひねっていて・・・その動きが難しいです。
講師A:そういう人体のねじれがきちんと表現出来ると、このポーズのきれいさが出ますね。
講師K:Tさんはそういうところを絵の中で意識しようとするところが、ちゃんと絵のイメージがあるな、という感じでいいですね。

「短期講座 人物を描く」2日目。<後編>



先週、私(講師K)が皆さんの参考のために描いたクロッキーを見てください。色を使ってクロッキーをしています。そうすることで少しでもこれから描く絵の色調や、雰囲気を自分で見つけるためのものでした。今日は、皆さんにそこからもう一歩進んで、色つきの紙に描くことをやって頂きました。(私も描いてみました。下図)



なぜ色付きの紙に描いて頂いたかというと、今回の本番の絵を、中間色の下地を施し、その上に描き始めるということを試して頂きたかったからです。中間色を下地に施しておくと、その色よりも明るい色と、暗い色の両方を使って描くことが出来ます。私はこのエスキースを、茶色っぽい黄色のボール紙に油絵具で描きました。本番の絵の描き出しの参考になるかも知れません。ロートレックも同じようなことをやっています。(当然、ロートレックははるかにうまいのですが…。)実は今日、ロートレックの画集を見て頂く予定でしたが時間がなくなってしまいました。3日目の来週にお見せしようと思っています。様々な絵を見て、下地にはどんな色が置かれていたのかということを想像してみてください。それが解りにくい絵もありますが、解りやすい絵もあります。さて、来週はいよいよ本番のキャンバスに入ります。

2010年5月7日金曜日

「短期講座第1弾 人物を描く」始まりました。

本日より、2ヶ月間の人物講座がスタートしました。授業の様子を(目標としてこの講座が終わるまで毎週)ブログにてご紹介させて頂きます!




今回は合計8回の授業で、原則としては1枚の作品を仕上げるというスケジュールです。初回となる本日はまず、人物に慣れていただくため、クロッキーを行いました。クロッキーというのは、5分や20分など、比較的短時間で対象物を捉えることです。特に描き方の決まりはないのですが、今回は人物モデルを描くのは初めてという方が多かったので、とにかく手を動かしながら人物固有の空間に慣れて頂く事、全体のバランスを見ながら描く事を目標に描いて頂きました。全体のバランスを見ながら描く・・・口で言うのは簡単ですが、これがなかなか難しく、リカちゃん人形(古いですね)のようなプロポーションになってしまったり、頭から描き始めて画面に入りきらず足が切れてしまったり・・・。今回は画面の中でのバランスを見ていくポイントとして、次の事をお話しさせて頂きました。

 ・画面の中での頭の位置を決めたら、肩や腰、脚がどう入るか大まかにイメージして当たりをつけてみる(その上で構図が悪ければ、頭部の位置を動かしてみる)

ほとんどの方が、頭を描く時には頭のみ、腕を描く時は腕のみにしか意識がいきません。結果的に全体のバランスが崩れるのは当然なのです。その他にいくつかポイントをお話ししましたがここでは省略します。

一日分のポーズが終了したところで、今日描いた中から1枚を選んで頂き、そのクロッキーについて個々にアドバイスさせて頂きました。授業の中で、「クロッキーというのは、常に全体を捉えなくてはいけないというものではなく、時には手や顔だけ等、気になる部分のみ描いてもいいですよ」とお話をさせて頂いたのですが、出来上がったクロッキーの中には脚と手だけを描いたものがありました。ご本人曰く「好きなんですよ」という事でしたが、興味があって描いているだけに表情の柔らかい、いい線を引いていらっしゃいました。

形を正確に捉えるだけでなく、自分できれいだと思う事を見つけ、それにこだわりを持って描くという事も絵を魅力的にしていく重要な要素ですね。


今回の受講生の中では唯一、人物モデルを描いた経験のあるYさんのクロッキー(2枚とも)より。